性病ごとの症状と治療法 

性病の母子感染

HIV性感染症はケータイ小説の大ヒットで一気に「時代の病気」になりました。
性病の母子感染はケータイ小説内では巧妙に避けられています。

エイズで死に至る人間とは別の(あるいはその人が性病感染する前の)子どもが作品中で産まれ、健やかに成長していく物語は『ケータイ小説的。』という本の出版まで引き起こしました。
性病に感染した登場人物から子どもが産まれないのは、性病の持つ重要な側面を意図的に書き落としている現象と見えます。

性感染症は、発展途上国では、性行為によって陰部に感染することよりも、母子感染が蔓延することのほうが深刻な問題です。
血液感染する性感染症は、妊娠中の胎盤や、出産後の母乳(母乳は血液から作られます)によって直接感染します。

母子感染した貧困層の子どもが、避妊具を持たないまま性行為を繰り返して出産する。
こうした連鎖によって、ひとつの共同体内に性感染症が深く広まってしまうことが、実は性感染症の最大の恐ろしさなのです。

性病であるエイズを登場させておきながら、「子どもだけは綺麗に健やかに」育つケータイ小説の結末は、読者の気持ちを埋めてくれる力を持っているとは思います。
しかし、性病のことを正確に把握するためには、母子感染があるということ、妊娠中・授乳中の母親が感染すれば子どもにもうつるということは忘れてはいけません。
そして、発展途上国でのエイズ蔓延がひどい男尊女卑にも支えられていることを、知っておく必要があるでしょう。